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なんとなく観た映画の感想です。マイナーな映画が好きですが、そうじゃないものも好きです。たまに舞台やドラマの感想も。
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<2009年9月12日 福島フォーラムにて観賞>


マイナー映画同好会13


おいら毎日大きなリュックをしょって電車に一時間揺られているの。
リュックの中身は、絶対受からない資格試験のテキストと、
作業着、ノート、筆記用具、帽子、雨合羽、傘
(なぜ合羽と傘が両方必要かと言えば、駅までバイクで通ってるから)

そして一番大事な、

お弁当。

おいらは派手なストライプ柄のリュックをしょっている。

お医者さんは大きなお医者さん鞄を持っている。

この人のお医者さん鞄には何が詰まっていたんだろう?
と、思った。

「Dear Doctor」


おいらの大好きな「ゆれる」の、西川美和監督の作品だからどうしたって期待しちゃうんだ。

鶴瓶がいい。ある瞬間から鶴瓶が鶴瓶に見えなくなる。
全編通して、ユーモラスではあるんだけど、同時に不安感というか、
焦燥感というか、
観てる人間は落ち着きをなくして、そわそわする。

アー、コンナムラハヤクデテイッテシマエ
ムラビトナドオイテニゲテシマエ

そう叫びたくなる。

村人が、鶴瓶演ずる医者、伊野を、神よ仏よとあがめるのは、
村人のエゴでしかない。
そんな普通の村人の中に潜むいやらしさがにじみ出ていることに気付くと、
平静では観ていられなくなる。
村人は伊野の、村で人々を診療してくれる、親切なお医者さんという姿以外は、
見ていなかったし、興味もなかったんだろな。
伊野の真実は誰も知らなかったし、知ろうともしなかったし。

途中で、伊野が村に住みついているわけではなくて、
村に縛り付けられていたんじゃないかって思った。
何度も何度もその縛りから逃れようとするんだけど、
どうしても逃れられない。
夜中に必死に医学書を読んで勉強する伊野の姿が悲しくて悲しくて。

伊野がニセ医者だと薄々感づいていたらしい看護師の、
余貴美子の迫力が並大抵でない。
圧倒的な存在感。
伊野がいなくなってからも同じように続く息子との生活。

それに比べて、なんとも希薄な伊野の存在感。

瑛太演ずる研修医もいい。

相馬という、一見真面目で純粋な若者は、刑事に問われた時に、
自分も薄々おかしいと感じながらも、伊野をフォローしていた、
というような、自己保身にもみえる言葉を、何でもないことのように話す。

伊野に対して、地域医療について熱く語ったあの一途さ、
純真さはなんだったんだって思いつつ、
彼はその場に応じて順応して生きていける、少しズルイ、
でも普通の若者なんだとも思う。

香川照之の薬品会社営業の斎門もいいな。
伊野の正体を知りつつ、金のために協力する。胃カメラも飲んでやる。
刑事の問いにも、煙に巻くようなことを言ってうやむやにしてしまう。

最後のほうに、斎門の嫁や子供たちとの慌ただしい朝の風景がちらっと出てくる。
伊野がいなくなってからもそれぞれに通常の生活は続いていく。

それは当然と言えば当然なんだけど、誰も伊野の心の中にずかずかと
踏み込んでいく人間はいなかったんだ。

八千草薫との会話がいいね。
自然と、まるで脚本などないかのように続く世間話。
野球中継など見たことのないかづ子のために、少しルールを教えてあげて、
知ってると楽しいですよ、と、ほんの少しだけ、引っ張ってあげる。

なぜ伊野がニセ医者をしていたのか、その理由は最後まで明らかにならない。
伊野に救われたとか、伊野を今でも待っているとか、伊野でなければとか、そういう人は
誰もいない。
でも、そのかわりに伊野も村人に心を開くことをしなかった。

へき地を転々としながらニセ医者を続ける伊野は村を逃げ場所にしたけれど、
最終的にはまた逃げ出さずにはいられない。

でも、伊野が唯一逃げずに向かいたかった場所が、かづ子のもとだったことに、
ほっと安堵した。
 

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たかちんと申します。映画が好きですが、マニアと言うほどではありません。なんとなく観た映画の感想をなんとなくぽちぽち書いていきたいと思います。
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