<2010年5月22日 DVDにて観賞>
マイナー映画同好会14
(えーと、及川光博ピックアップでもありますが・・・)
むむむ。
これ、わざとなのかな?妙にクリアでチープな映像と、変にくぐもった響きの音声。
昔の土ワイ観てるみたい。
原色がまがまがしく、不気味さを醸し出す。
もうとにかく、グロさとチープさがすごいコントラストです。
浅草レビューのスター水木蘭子の舞台を見物に行った三文小説家小林紋三(リリー・フランキー)は、隣席に座る不気味な男の事が気になっていた。
その男は始終俯いたまま、蘭子が舞台に登場しても一向に顔を上げないのだった。
その帰り道、紋三はさらに奇妙な光景に遭遇する。子供の身体に大人の頭の持ち主「一寸法師」が切り落とされた女の生腕を運んでいたのだ。
紋三は小説家の性からか一寸法師に興味を覚え独自に調査を始める。
そんな折、紋三は同郷で密かに想いを寄せていながらも今や人の妻となった百合枝から紋三の友人、探偵明智小五郎(塚本晋也)を紹介して欲しいと頼まれ彼の下宿を訪ねる。紋三はそこで明智が今興味を持っているという事件を聞かされ驚く。あの水木蘭子が失踪したというのだ。だがそれはまだ事件の発端に過ぎなかった.…やがて次々と起こる猟奇事件。そして紋三と明智はその解明に挑んでいくのであった。
盲獣のとてつもない気味の悪さ。ぬらぬらと不気味に濡れる唇。盲目の濁った眼球。見てて気分が悪くなります。(褒め言葉)
全体的に素人臭さが漂う、まるで大学の映研の自主制作映画のよう。(実際、プロの俳優はほとんど出演していない)
主役のリリー・フランキーも、最近でこそ映画に出演してるけど、このときは全く演技に関しては素人。
明智小五郎役の塚本晋也も本業は映画監督だし。その他大勢の人々もオーディションで選ばれた素人さん。
たどたどしすぎる・・・
死体なのにまばたきとかしてるしwww
不自然なカメラワークと相まって、なんだか不思議な感覚におそわれる。なんか、クセになるというか、悪くないです。
いかにも作り物めいた死体や切り取った女の腕など。
低予算インディーズ映画ゆえなのか、あえてリアルさを追求しないことで生み出される迫力を求めてのことなのか。
盲獣の創り上げたおぞましい世界と、エロティシズムの極致。
飛び散る血と肉。
チープさがかえってリアル。
終盤、死体の運び役となった運転手蕗屋君役の及川光博君が登場したときに、画面に急に光が差した気がしました。(いや、大げさでなくさ)
あまりにたどたどしい素人の世界に、突然俳優さんが現れたって感じで、逆に浮いてる感じもするんだけどね。
及川君の激しいキスシーンがあるんだけど、メイキング映像では本編よりさらに長いシーンが収録。
いろいろ映画やドラマに出演してるけど、意外にこういうシーンは少ないというか、珍しいかも。貴重です。
昭和初期の、金持ちの家に雇われてる運転手役の及川君。
変な白いシャツとか、オールバックとか、なんか、昭和が似合うよなあ。
かっちょよいです。
最後に突然現れて、盲獣が自らの体を埋め込んで作った石膏像を、
「こんなものは芸術ではない!!!」
と、杖でガツーンと破壊する芸術家の大家役の丹波哲郎!
ちょこっと出演してラストカットが顔のアップ。
おいしいところを持っていく丹波哲郎。
もうなんともかんとも・・・
まあ、面白く観たんだけど、ただ、タイトルにもなってる
「盲獣vs一寸法師」
二人の直接の接点はないので、小林の独り言みたいな推測でしか二人のかかわりが触れられていないのが物足りない。というか、ちょっと無理のある設定だった気が。
別の事件が並行して描かれてる感じがしちゃったので。
2001年制作2004年公開
監督 石井輝男
出演 リリー・フランキー 塚本晋也 平山久能
<2010年5月22日 DVDにて観賞>
及川君こーゆー役ほんと似合うわ
とりあえず、演歌歌手出身で、流行りものの音楽にすぐ飛びつく
東馬健役の及川光博君が、アホっぽくてよかった。
つーか、テレビ出演してる時の東馬の顔色が黒すぎる!
手の色白さと比べて違いすぎるわwww
『セルロイドの夜』はこの映画のためにつくられた曲だったのかな。
及川君のアルバム『流星』
全体がロック&ポップスな感じの流れなのに突然演歌が入ってるから、
ちょっとびっくりしてたんだけど、
あー、東馬健が歌ってたわけね。
映画の雰囲気にピッタリです。
そして、逃げた彼女の乗ったタクシーを追いかけて屋根に飛び乗る東馬。
どう見てもホラーです。
80年代のポップカルチャーが色濃く出てるんだろうけど、
そのあたりの時代文化を体感していない自分にとっては
どこまでがポップなのかどこからが軽々しいのか?
1980とは、軽薄さがよしとされた時代に突入したと理解していいのだろーか?
彼氏のために映研の撮影で服を脱ぐかどうか悩む三女。
男にだらしなく、芸能界から失踪、突然姉妹のもとに現れる次女。
夫の浮気を疑い離婚を考え実家に戻っている長女。
なんとなく心にもやもやを抱えながら、でも妙に明るく生きようとする三姉妹。
ラスト、三姉妹のシーン。
ウォークマンを初めて聴いた長女の一言が印象的。
「三人で聴くには不便だなーって思って」
便利さを安易に享受し、それを不便だなんて思わない現代につくられた映画だからこそ、出てきたセリフなんだなきっと。
監督・脚本 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 ともさかりえ 犬山イヌコ 蒼井優 及川光博 串田和美
2003年公開
<2010年5月18日 福島フォーラムにて観賞>
ユアン・マクレガーに撃ち抜かれました
もちろん、ジム・キャリー目当てで見に行ったんだけど、
ユアン・マクレガーのかわいらしさにやられた・・・
ユアン、かわいいよかわいすぎる。
ジムもユアンもゲイの役なんだけど、押しの強いジムと、
はかなげなユアンが意外に似合ってた。
フィリップ役ユアンの、首のかしげ具合、上目づかい、すねた口調、
すべてが優しくてかわいいフィリップそのもの。
スター・ウォーズのオビ・ワンとは全く正反対の、
ワイルドさのかけらもない演技。とにかくかわいい。うまいなあやっぱり。
下ネタも多いんだけど、ジムがあんまりひどい品の悪さにしてないから、
カラッとした雰囲気で、安心して笑って観てられる。
(あ、でも親とは観れないかも・・・)
ジムがゲイって、あんまりピンと来なくて(どちらか言うと女たらしのイメージ)
でも、全く違和感なし。ユアンのかわいらしさと相まって、
すごくお似合いのカップルになってたな。
初めて刑務所内でジム=スティーヴンがユアン=フィリップを見たときのあの目!
いやらしくはないんだけど、もう、一目でフィリップに心を撃ち抜かれたっていう、
衝撃がものすごく伝わってきて、あー、スティーヴン、
君を応援したいよって気持ちにさせられちゃう。
刑務所の中の二人のスウィートルーム。
アメリカの刑務所ってあんなに自由なんだー、なんて思いながら、
思わずにやにやしてしまう男二人のラブラブっぷり。
スティーヴンは、フィリップを喜ばせたいがためにあらゆる手段を使って、
同室にしたり、食事を豪華にしたり。
出所してからも、フィリップを早く出所させるための詐欺を働いたり。
途中、スティーヴンが別の刑務所に移送されるって時、
中庭に出るのはあんまり好きじゃないっていってたフィリップが、
スティーヴンを追いかけて中庭に出て全力疾走。
車に乗り込ももうとしてるスティーヴンに叫ぶ。
「スティーヴン!愛してる!」
一途だよフィリップきみは一途だ素敵だよ・・・
でも、スティーヴンのフィリップに対する想いって、
どこまでフィリップのことを考えてるんだろう?
自分がフィリップに会いたいがためにしてることって、
全部犯罪だもの。
脱獄、書類の不正な改ざん、弁護士だの会社役員だの身分を偽っての豪遊。
経歴を偽ってまんまと財務担当役員として入り込んだ会社でも、
普通に勤めてれば多分平穏に暮らしていけただろうに
(でもいつかはばれたかも?)でも、悪い癖が出て多額の横領。
そしてセレブライフ!
ちょっと変だと思い始めたフィリップが、泣きそうな不安な表情で、
「悪いことしてないよね?お金なんかなくても一緒にいれればいいんだ」
性格はすごくいいけど、ちょいとお人好しでだまされやすいフィリップ。
スティーヴンは悪いことなんてしてないよと言いつつ、実は全てが犯罪。
そしてそのとばっちりを受けて、フィリップも罪に問われてしまうわけだし・・・
結局、愛という気持ちのいいフレーズに隠されたスティーヴンのエゴなんじゃないの?
終盤、病に倒れ死期がせまるスティーヴンのもとに、
だまされていたことに怒ってもう二度と会わないと言っていたフィリップから電話が。
「許してないよ。でも、愛してる」
なんだかんだあったけど、やっぱり二人には幸せになったほしかったよ。
死ぬ前に会わせてあげたかった・・・
なんて涙してたら。
なんだよ!これも詐欺かよ!
スティーヴンの、脱獄するための一世一代の演技。
すげーよスティーヴン!
つーか、さっきの涙返してくれ!!!
平気な顔してフィリップの前に現れたスティーヴンに、
フィリップ思わずおもいっきり平手打ち。
おいらも一緒に殴りたかったよ。
観客さえ詐欺にあわせるのか。
結局、またスティーヴンはつかまってしまうんだけど、なんか、
二人の幸せを願ってしまい、かつハッピーな気持ちになる映画だったなあ。
あ、スティーヴンの元カレのジミー役のロドリゴ・サントロが、
すごく色っぽくて、ほんとのゲイに見えたのだ。
いい男ばっかり出てるんだけど、みんなゲイ役。
<2009年9月12日 福島フォーラムにて観賞>
マイナー映画同好会13
おいら毎日大きなリュックをしょって電車に一時間揺られているの。
リュックの中身は、絶対受からない資格試験のテキストと、
作業着、ノート、筆記用具、帽子、雨合羽、傘
(なぜ合羽と傘が両方必要かと言えば、駅までバイクで通ってるから)
そして一番大事な、
お弁当。
おいらは派手なストライプ柄のリュックをしょっている。
お医者さんは大きなお医者さん鞄を持っている。
この人のお医者さん鞄には何が詰まっていたんだろう?
と、思った。
「Dear Doctor」
おいらの大好きな「ゆれる」の、西川美和監督の作品だからどうしたって期待しちゃうんだ。
鶴瓶がいい。ある瞬間から鶴瓶が鶴瓶に見えなくなる。
全編通して、ユーモラスではあるんだけど、同時に不安感というか、
焦燥感というか、
観てる人間は落ち着きをなくして、そわそわする。
アー、コンナムラハヤクデテイッテシマエ
ムラビトナドオイテニゲテシマエ
そう叫びたくなる。
村人が、鶴瓶演ずる医者、伊野を、神よ仏よとあがめるのは、
村人のエゴでしかない。
そんな普通の村人の中に潜むいやらしさがにじみ出ていることに気付くと、
平静では観ていられなくなる。
村人は伊野の、村で人々を診療してくれる、親切なお医者さんという姿以外は、
見ていなかったし、興味もなかったんだろな。
伊野の真実は誰も知らなかったし、知ろうともしなかったし。
途中で、伊野が村に住みついているわけではなくて、
村に縛り付けられていたんじゃないかって思った。
何度も何度もその縛りから逃れようとするんだけど、
どうしても逃れられない。
夜中に必死に医学書を読んで勉強する伊野の姿が悲しくて悲しくて。
伊野がニセ医者だと薄々感づいていたらしい看護師の、
余貴美子の迫力が並大抵でない。
圧倒的な存在感。
伊野がいなくなってからも同じように続く息子との生活。
それに比べて、なんとも希薄な伊野の存在感。
瑛太演ずる研修医もいい。
相馬という、一見真面目で純粋な若者は、刑事に問われた時に、
自分も薄々おかしいと感じながらも、伊野をフォローしていた、
というような、自己保身にもみえる言葉を、何でもないことのように話す。
伊野に対して、地域医療について熱く語ったあの一途さ、
純真さはなんだったんだって思いつつ、
彼はその場に応じて順応して生きていける、少しズルイ、
でも普通の若者なんだとも思う。
香川照之の薬品会社営業の斎門もいいな。
伊野の正体を知りつつ、金のために協力する。胃カメラも飲んでやる。
刑事の問いにも、煙に巻くようなことを言ってうやむやにしてしまう。
最後のほうに、斎門の嫁や子供たちとの慌ただしい朝の風景がちらっと出てくる。
伊野がいなくなってからもそれぞれに通常の生活は続いていく。
それは当然と言えば当然なんだけど、誰も伊野の心の中にずかずかと
踏み込んでいく人間はいなかったんだ。
八千草薫との会話がいいね。
自然と、まるで脚本などないかのように続く世間話。
野球中継など見たことのないかづ子のために、少しルールを教えてあげて、
知ってると楽しいですよ、と、ほんの少しだけ、引っ張ってあげる。
なぜ伊野がニセ医者をしていたのか、その理由は最後まで明らかにならない。
伊野に救われたとか、伊野を今でも待っているとか、伊野でなければとか、そういう人は
誰もいない。
でも、そのかわりに伊野も村人に心を開くことをしなかった。
へき地を転々としながらニセ医者を続ける伊野は村を逃げ場所にしたけれど、
最終的にはまた逃げ出さずにはいられない。
でも、伊野が唯一逃げずに向かいたかった場所が、かづ子のもとだったことに、
ほっと安堵した。
マイナー映画同好会12
またまた福島までドライブ。
うちのアペちゃん(車ね)は、花粉と黄砂でどろどろなのに、
機嫌よくブンブン走ってくれる。
で、福島フォーラムの駐車場について、ふとメーターを見たらばさ、
70000キロを超えてたの。
あ~!70000キロ記念撮影するの忘れた!
って、残念がったらさ、アペちゃんが、
「気にすんなよ。77777キロのときは撮ってよね」
って、笑った。
アペちゃんは車なのに会話できる。
そして、人形と会話するのは、
「ラースと、その彼女」
の、ラース。
ラースは人付き合いが苦手で、特に女の子と話すのがかなりつらい。
兄夫婦の家の敷地のガレージに一人で住んでいる。
彼女もいないラースを心配する兄嫁や町のおばちゃん。
で、ある日ラースが、彼女を連れてきたんだ!と、うれしげに兄夫婦に報告する。
大喜びする夫婦の前に、ラースがつれてきたのは、
等身大の人形。
“リアル・ドール”
変わり者だと思ってたけど、
とうとうビョーキになってしまった!
驚愕してショックを受ける兄夫婦をよそに、ビアンカ(人形の名前ね)の
紹介をするラース。
でもね。
だんだん町の人たちに受け入れられるビアンカ。
“仕事”も与えられ、ビアンカは忙しくなってくる。
ビアンカと過ごす時間が減ってきて、ラースはイライラ。
会社で少し気になっている女の子に彼氏ができて、イライラ。
そんな時、ビアンカが病気になってしまい・・・
なんかねえ、ビアンカ美人なんだよ。
そーゆー、成人男性むけのお人形なんだけど、観てるうちにだんだん、
ビアンカに表情があるような気がしてくるの。
半開きの口も卑猥なんだけど、何か言いたげな表情に思えてくるし。
あとね、印象的だったのが、兄夫婦の対応。
冒頭、一緒に食事をすることを拒むラースに対して、無理やり食事に誘う兄嫁に、
あいつは昔からそうだから、大丈夫だよ、
と、そっとしておこう派の兄。
ラースがビアンカを連れてきたときも、
驚愕の後、
あれが原因だろうか、
とか、
これのせいだろうか、
とか、
いつまでもぐちぐちと悩む兄に対して、
冷静になりましょう、と、表面上はビアンカを受け入れ、
自分たちでは対処しきれないと、お医者や町の人々の協力を求める。
いや、いざとなれば男よりも女の方が強い、って言いたいわけではなくてね。
(いや、そーゆー側面もあるかな。ラースを無理やり食事に誘うのに、
ラースに飛びついて、地面にねじ伏せ、兄嫁あんた妊娠中でしょ!って
突っ込みたくなったほどの見事なタックルだったし、
町の人たちとの話合いでも、批判し否定ばかりする男たちにたいして、
ラースを守っていこうっていうのが女の人たちだし)
他人だからこそ、遠慮せず、対応できるってことがあって。
実の兄弟って、兄弟だからこそ気を使ってしまったり、遠慮しちゃったり。
友達だったら遠慮なくずけずけ言えるけど、
親兄弟だと、遠慮して、気を使って何もいえなくなってしまうことってない?
ラースの兄は、ラースの出生時の事情とか、死んだ父親との関係を思って、
いろいろ考えてしまうんだけど、
兄嫁のほうはそんなこと関係ないから、ぶつかっていける。
そんなことを、観てて思った。
ラースはやさしいな。
個人的にはね、会社の女の子の大事にしてるクマのぬいぐるみが同僚にひどいいたずらを
されてしまったときに、ラースがクマに人工呼吸して
蘇生させてる場面が、かわいくて、ちょっと泣けてきたの。
ぬいぐるみとか、人形とか、ペットとか、
人にはわからなくても、自分のなかで、それがいることで毎日元気になれるってこと、
あるよね。
ラースはビアンカの存在があることで、社会にあるいていけたんだよ。
ラストの、ビアンカのお葬式は、
そこまする町の人、すげえ、って思った。
ビアンカが死んでしまうことで、ラースは一歩踏み出せるんだけど、
正気に戻ったとか、ビアンカが人形だったことに気づいた、とか、
そういうことではなくて、
あくまでも、ビアンカといた日々はラースにとって、いや、町の人たちにとっても、
現実のことだったんだよな。
すごく、やさしい気持ちになれる映画。
自分が町の人々だったら、どうするかなあって。