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なんとなく観た映画の感想です。マイナーな映画が好きですが、そうじゃないものも好きです。たまに舞台やドラマの感想も。
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<2006年11月1日 福島フォーラムにて観賞>


マイナー映画同好会7


ある日、用事があってあんちゃんの携帯に電話したら、
・・・おかけになった電話番号は現在使われておりません・・・

あんちゃんまた携帯変えた・・・

うちのあんちゃん、携帯の機種で気に入ったものがあれば、他社にすぐ乗り換えて、電話番号変わっても平気らしい。
(まだナンバーポータビリティとかやってなかったからね)
あと、たまに新規にしたほうが安かったりすると、新規にして、また番号変えちゃう。

へんなの。。。

仕事でケータイ使うわけじゃないから、いいのかもしれんけど、いちいち不便だよなあ・・・
あ、だからよくあんちゃんの友達から固定電話にかかってくるんか!
なんでケータイにかけんかなーって思ってた。

あるいは、スパイとか、スナイパーとか、裏の顔があって、連絡先ちょこちょこかえなきゃいけないとか・・・んなわけないか。

あんまり普段はしゃべらない兄弟だけど、仲が悪いわけではなく、何かあるとやっぱりあんちゃんに相談したりする。
おねえちゃんとか、妹とかほしかった気もするけど、でも、ま、あんちゃんがいてよかったな、って思うときもたまにある。(昔は殴り合いのケンカとかしたけどね。)

兄弟つながりということで、兄弟をテーマにした映画を観てきたのでその感想。



えいがのかんそう(「ゆれる」ネタバレ注意!)



久々に凄い映画を観た気がした。
西川美和監督
「ゆれる」
主役の、早川猛(はやかわ・たける)を演じるオダギリジョーの力量も然ることながら、猛の兄、稔(みのる)を演じた、香川照之の圧倒的存在感と、演技力は、身震いがするほど。

東京で写真家として成功している猛は、母親の一周忌のため、山梨の実家にもどる。
兄の稔がついでいる家業のガソリンスタンドでは、二人の幼馴染みの智恵子が働いている。
次の日三人は、近くの渓谷まで遊びに行くが、つり橋の上から智恵子が転落してしまう。
そばにいたのは稔一人。
事故なのか、殺人なのか。裁判が進むなかで、やさしく実直だった稔の、違う一面が現れる。
兄の変化に戸惑う猛。そのときに猛のとった行動は、意外なものだった・・・。

まるで芥川龍之介の「藪の中」のように、二転三転する墜落の瞬間の回想シーン。
何が真実なのか、観る者を惑わせ、焦燥感をあおる、西川監督の演出は見事としか言いようがない。

物語が進むにつれ、微妙に変化していく兄弟の関係。

さびれた田舎の小さいガソリンスタンドを、父と切り盛りしている稔。
優しく、気の弱い稔。あまりうまくいっていない弟と父の間を、右往左往しながら取り持とうとし、怒る弟をなだめる。
そんな稔が、智恵子の転落事故(事件?)を境に、したたかで、計算高い、ずるい一面をあらわしていく。

香川照之の凄いところは、どんな役でも、この役は香川照之にしかできないと思わせることだ。
裁判の過程で徐々に変化していく稔のしたたかさを、視線の動き、話し方、うなだれた首筋、すべてが演じている。

傍聴席に向かい深々と頭を下げる態度、自分が智恵子にどんな罵声を浴びせかけられたかを弁護人に問われた時の、消え入りそうな声。(←かなりかわいい!)
明らかに裁判官の心象をよくしようという計算高い、巧妙な稔の演技。

猛が智恵子と寝た後に家に帰り、洗濯物をたたむ兄とぎこちない会話を交わす。
お互いに腹の探りあいをする二人。
何も知らない振りをしつつ、すべてを知っているような、不気味さをかもし出す稔。

香川照之、かなり凄い。

オダギリジョー演じる猛は、都会で活躍する新進気鋭のフォトグラファー。
レイバンのサングラスに、皮のコート、派手なパンツ。
クラシックなフォードを乗り回し、女には不自由せず、自分の才能に絶対的自信を持っている。
面白いくらいに、いかにも、のステレオタイプの男を演じている。

猛は、どこかで、田舎から出られない、ちっぽけな街に安住している兄と自分を対比し、優位に立っているという錯覚を起こしていたのだろう。
智恵子と寝たのも、兄が智恵子に対してひそかに思いをよせているのを感じ取ったことがあったのだろうし、転落事故後の、動揺して錯乱状態の兄に対しての、おれが兄貴を守る的な発言や、面会時に、投げやりになる兄に、絶対無罪だから、とのなぐさめ。
すべてが絶対的に優位に立つ者の驕りだったのかもしれない。

だから、実直だけが取り柄で、優しかった稔が、どんどんしたたかになっていき、ふてぶてしいまでの印象を残すようになったのと反比例するように、全てがかっこよく、自信たっぷりだったはずの猛が、どんどん自信をなくしていき、兄の変化に戸惑い、自分の目撃した記憶に恐れ、破綻していくさまは、あまりにもつらくて、正視できないほど。

後半は、いい意味で予想を裏切られた。
猛のとった行動が、兄と、兄を守ると言った自分の言葉を裏切ることになったこともしかり、
(これはある程度知っていたけれど)
そして、裁判での最後のシーンに、兄を蹴落とすことになった猛に対しての、稔の穏やかな表情。
あくまでも、穏やかな表情を崩さない香川照之の演技。

しびれた。

ここで物語が終わってもよかったと、一瞬思った。
兄弟の絆を断ち切って、そのまま余韻を残すような演出でもいいと思った。
その後の物語は蛇足ではなかったかと。

だが、その予想も見事に裏切られた。

母親の形見の8ミリを観る猛。
子供の頃の映像に、よみがえるもうひとつの記憶。

いや、これは真実の記憶なのか?
猛の願望が、昔のフィルムに触発されて、再構成されただけではないのか?
(監督自身は、真実めいたことを語っているけれど。)

だが、実はそんなことはどうでもいい。
なぜなら、本当に再構成されようとしているのは、稔と猛の兄弟としての関係だったから。

それは、ラストシーンの稔の笑顔が如実に表している。

あの後、稔はどうしたのかな。
バスに乗ったのかな。
これこそが本当の余韻。


秀作。
 

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